月夜見
 puppy's tail 〜その51
 

 “ほかほかのお昼間”〜冬の朝。付け足り篇
 

    ぬくぬくの りびんぐは
    みんなで集まってゴロンチョしちゃうお昼寝広場。
    へちょりってくっつけたお腹からも暖ったかくって、
    あそぼあそぼってしてたのに、
    いつのまにかとろとろとろりん、
    お眸々がねむねむになっちゃうから不思議でしゅ。





  ◇  ◇  ◇



ルフィとその父上とが居着くようになってから、
先代のミホークさんが取りつけたという床暖房。
床に近い背丈のわんこや子供のいる家庭では、
安全性も鑑みて、これが殊の外に威力を発揮するのだと、

 『…あの親父が何で知ってたんだろか。』

さすがは先達…と素直に関心しなかった実の息子の不満顔は恐らく、
自分だってそのくらいは気がつけたし、
自分こそが愛する家族のために手を打ってやりたかったのにという、
先駆者へのかなわぬ嫉妬のようなもの。

 『そだね。
  ミホークのおっちゃんも、暑い寒いにはあんまり動じない人だったのにね。』

ゾロと同じでと、ルフィが余計な言いようをくっつけたお陰様、
ちょいと機嫌が損なわれかかったご亭主だったが、

 『ぬくぬくっ♪ ほかほかでしゅvv』

フローリングの上、
へちょりと腹這いになって喜んでいる小さな王子様の笑顔には、
お不動様みたいだった顔つきも一気にほぐれるから、現金なことこの上もなくて。
暦の上では春だのに、
それとは裏腹、朝晩の冷え込みは半端じゃあない時期に入ったものの、

 「…あらあら♪」

わんこの姿で外から戻ってくる家人のための、大判のタオルやら着替えやら、
リビングの一角にも常備してあるのを補充しに来たツタさんが、
広々したリビングで繰り広げられてた情景に、思わずのこと頬を緩ませた。
朝ごはんを食べたところまでは、奥方も坊やも人の姿をしておいでで。
明け方お外を走って来たのと言う奥方が、
細っこい肢体には似
そぐわない健啖家ぶりを発揮しつつも。
植木鉢の水受けに薄氷が張っていたとか、
土手の傾斜
なぞえに霜柱が立ってるとこがあって、
踏むとさくさくいって面白かったとか。
寒い町なか、冒険して来て拾えたお話を、楽しそうにご披露していて。
その後、食休みをしてから、
今日はジムの方への出勤もお休みの旦那様を囲むようにして、
絵本を広げたり、動物や“働くくるま”のDVDを観たり、
小さなビニールボールを転がしたりして遊んでおいでだったようだのに。
それが今は…何とも静かなご様子で。

  zzzzzzz………….

床から足元を温める温水暖房の効果のみならず、
やわらかな陽光が大きな窓から射し入るのにも くるまれて。
それぞれ小さなわんこの姿のまんま、
くうくうと心地よさげなうたた寝に目許を伏せている家人らを、
その雄々しい腕や懐ろへと凭れさせ。
ご亭主までもが眠っておいでだったものだから。

 “なんてまあ…vv”

そのまま寝間着にしても善さげな、
シンプルな型の無地のトレーナー姿のご亭主は。
さすが有名著名なアスリートたちが、
伝説のトレーナーとして頼りにするだけの鍛練を
自分へも課しての作ったそれだろう、均整の取れた肢体をし。
規則正しい寝息に上下する胸板も、結構な厚みをしておいで。
そんな胸元、懐ろへ、
今にも転げ落ちるんじゃないか、すべらぬかと思えるような角度で、
それでも小さな顎先を危なげなく乗っけて寄り添っているのが、
純白の毛並みをふかふかと膨らませた、小さな小さなウェスティくんで。
突き出したお鼻を四角く見せての、いかにもテリアくんというお顔を、
だが、少々寝癖がついての偏らせつつという熟睡ぶりは、
見ているこちらまで誘われそうな安らかさ。
そしてその一方、坊やが居るのと反対側では、
無造作に投げ出されたご亭主の二の腕へ、
キツネさんのような尖った鼻先口の先だけを突き出して、
顎だけちょこりと乗っけたという、何とも無防備な恰好になって。
絹糸のような毛並みも優美なシェルティくんが、
他愛なくもくうくうと、静かな寝息を刻んでおいで。
小さな精霊の母と子が、頼もしい守護者に寄り添うて、
何の不安もなく寝入る姿…という言い方をすると、
この構図、随分と神々しいそれなのかもしれないが。
ウェスティくんもシェルティくんも、
その全身をだらんと延ばし切っての弛緩させ、
神々しいというよりも…ちょっと間が抜けた
何とも可愛らしいばかりな様相だったりするものだから。

 “〜〜〜〜いけない、いけない。”

吹き出しちゃってお起こししちゃあなるまいぞと、
ツタさんが慌ててキッチンの方へと撤退しちゃったくらいの緩みよう。

 「…?」

さすがにお耳の感度はいいから、
ひくくと震わした小さなお耳と共に、
はにゃ?と、何かありましたか?と、
黒々とした眸を開いた、シェルティくんことルフィ奥様だったけど。

 「んん? どした?」

顎が浮きかかった感触に、そちらさんも素早く気づいたか、
ご亭主が大きな手のひらで、よしよし心配ないからなと頭を撫でてくれたので。

 「…vv

きゅうぅんと目許を細め、再び眸を伏せた奥方で。
お日様の毛布がぽかぽかする中、
何とも天下泰平な朝寝を堪能している、
箱根のロロノアさんご一家なのでありました。



  〜今日のわんこ、でした
(こらこら)〜  08.2.18.


  *床上げはしたものの、油断するとまだちょっと
   お腹がエンスト起こしていつまでも食欲が出なかったりもしますし、
   この2、3日の冷え込みには、
   くしゃみが止まらなかったりもしております。
   あれ? でも、クシャミの方は花粉症かも? おや?

bbs-p.gif**


戻る